長崎県対馬市は、九州本土と韓国・釜山との間に浮かぶ国境離島である。南北に細長い対馬には、海上交通の要となる2つの主要港がある。島南部の厳原港と、島北部の比田勝港である。さらに本土側の博多港国際ターミナル、韓国側の釜山国際旅客ターミナルと組み合わせると、対馬への海上アクセスは「博多経由」「釜山経由」の2つの大きなルートに分かれる。本記事は、この対馬2港を地理・施設・運航便・アクセスのすべての観点から完全に整理する2026年版のポートガイドである。
2026年5月時点で、博多発のジェットフォイル便は船員不足を背景とした1隻体制の臨時配船に変更されており、4月1日から6月30日までは便数が大幅に減少している。一方、2025年11月21日には川崎重工が新型ジェットフォイルの建造契約を締結し、2029年6月の引渡が予定されている。釜山航路でも2024年4月23日のパンスター対馬リンク厳原便再開など、対馬の海上交通は大きな変化期を迎えている。本記事は、こうした激変期における対馬2港の現状を一望できる実用ガイドを提供する。
対馬2港の地理的配置と役割
対馬は南北約82km、東西約18kmの細長い島で、長崎県対馬市を構成する。九州本土から約132km、韓国・釜山から約49.5kmの位置にあり、日本本土より韓国の方が物理的に近い独特の地理にある。対馬市公式サイトでは各港の管理情報と最新の運用状況が確認できる。
| 港 | 所在地 | 運航会社 | 主な接続先 |
|---|---|---|---|
| 厳原港 | 対馬市厳原町 | 九州郵船 | 博多港 |
| 厳原港国際T | 対馬市厳原町東里341-24 | パンスターライン | 釜山港 |
| 比田勝港 | 対馬市上対馬町比田勝 | 九州郵船 | 博多港 |
| 比田勝港国際T | 対馬市上対馬町比田勝958-11 | パンスターライン・NINA | 釜山港 |
| 博多港国際T | 福岡市博多区沖浜町14-1 | 九州郵船 | 対馬2港・壱岐 |
対馬2港はそれぞれ国内航路用ターミナルと国際航路用ターミナルを併設しており、博多経由・釜山経由の旅行者を取り込む役割を担っている。厳原は対馬の中心地・観光起点、比田勝は釜山航路の玄関口・対馬北部観光起点という棲み分けが基本である。
厳原港:対馬の中心地・主要玄関口
厳原港は長崎県対馬市厳原町に位置する。対馬市役所所在地でもある厳原町は、対馬の政治・経済・観光の中心地であり、江戸時代には対馬藩(宗氏)の城下町として栄えた歴史を持つ。
九州郵船 博多便
博多港〜厳原港は、九州郵船のジェットフォイル便で約2時間15分、フェリー便で約4時間40分の所要時間。便数は通常時で1日数便、2026年4〜6月の縮小運航中はさらに減便されている。
パンスター対馬リンク 釜山便
厳原港国際ターミナルには2024年4月23日に再開されたパンスター対馬リンク号の釜山便が発着する。所要時間は約2時間10分、運航日は火曜・木曜の週2便(釜山発8:40、厳原発15:30)。比田勝便と組み合わせることで、釜山〜対馬の往来は週5日体制を維持している。
港内施設
厳原港の国内便用ターミナルと国際便用ターミナル(東里341-24)は別棟になっており、それぞれにチェックインカウンター・待合スペース・売店・トイレ・コインロッカーが整備されている。国際便用ターミナルにはCIQ(税関・出入国・検疫)施設も完備されている。対馬観光物産協会の観光案内所も近接しており、日本語・韓国語・英語の観光資料が手に入る。
港からのアクセス
厳原港から市街地中心部までは徒歩約10分。厳原城下町・万関橋まで車で約15〜20分、和多都美神社まで車で約45分、金田城跡まで車で約30〜40分の距離にある。対馬空港まではバスで約25分、対馬交通の主要バス路線も厳原港を起点としている。
予約電話
- 九州郵船 厳原港:0920-52-1115
- パンスター(個人予約):0920-86-2008(国際ライン対馬)
- パンスター(団体予約):0920-88-6060(サンスターライン対馬営業所)
比田勝港:釜山航路の玄関口・対馬北部観光起点
比田勝港は対馬市上対馬町比田勝に位置し、対馬最北端の港である。釜山港から約49.5kmという至近距離にあり、韓国からのインバウンド観光客にとって対馬の最初の入口となっている。日本本土より韓国が近いという対馬の地理的特殊性を最も体感できる港である。
九州郵船 博多便
博多港〜比田勝港のジェットフォイル便も九州郵船が運航している。所要時間は約2時間15分。便数は通常時で1日数便、2026年4〜6月の縮小運航中は減便されている。
パンスター対馬リンク 釜山便
比田勝港国際ターミナル(上対馬町比田勝958-11)には、パンスター対馬リンク号が月・水・金・土・日(土日は2往復)で発着する。所要時間は約1時間30分、釜山発8:40・比田勝発16:30が基本ダイヤである。比田勝〜釜山には韓国の国際ライン社「NINA」も並行運航しており、2社並行体制が継続している。NINAは電話予約のみの対応である。
港内施設
比田勝港国際ターミナルにはCIQ施設、チェックインカウンター、待合スペース、売店、トイレ、両替所などが整備されている。韓国語対応スタッフが常駐しており、釜山発の旅客の受入体制が整っている。比田勝市街地に近接しており、徒歩でレストラン・宿泊施設・観光案内所にアクセスできる。
港からのアクセス
比田勝港から対馬北部の主要観光地である韓国展望所まで車で約20分、対馬野生生物保護センターまで車で約30〜40分、烏帽子岳展望所まで車で約40分の距離にある。厳原港まではバスで約2時間20分、車で約2時間。
予約電話
- 九州郵船 比田勝港:0920-86-3015
- パンスター(個人予約):0920-86-2008
- パンスター(団体予約):0920-88-6060
厳原港国際ターミナルと比田勝港国際ターミナルの違い
釜山経由で対馬を訪れる旅行者にとって、どちらの国際ターミナルを使うかは旅程設計の重要なポイントである。両港の特徴を整理する。
| 項目 | 厳原港国際T | 比田勝港国際T |
|---|---|---|
| 住所 | 対馬市厳原町東里341-24 | 対馬市上対馬町比田勝958-11 |
| 釜山発所要時間 | 約2時間10分 | 約1時間30分 |
| 運航日 | 火・木 | 月・水・金・土・日 |
| 運航便数 | 週2便 | 週5日(土日は2往復) |
| 運航会社 | パンスター | パンスター・NINA |
| 主な観光ルート | 厳原城下町・金田城・和多都美神社 | 韓国展望所・対馬野生生物保護センター |
| 島内バス | 厳原起点路線多数 | 比田勝→厳原 約2時間20分 |
釜山発の旅行者にとっては、運航便数が多く所要時間も短い比田勝便が利便性で優位である。一方、厳原便は対馬中心地に直接アクセスできるため、城下町観光や島南部観光が目的の場合に有利となる。両港を使った「往路比田勝・復路厳原」のような周遊プランも組める。
対馬2港の選択ガイド:目的別最適港
対馬2港のうち、どちらから出発・到着するかを決める際の判断軸を整理する。
| 目的 | 本土側 | 対馬側 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 最速で対馬南部観光へ | 博多港 | 厳原港 | JFで2時間15分 |
| 対馬北部観光重点 | 博多港 | 比田勝港 | 韓国展望所・野生生物保護C近接 |
| 釜山経由 対馬南部観光 | 釜山港 | 厳原港 | 火・木のパンスター便 |
| 釜山経由 対馬北部観光 | 釜山港 | 比田勝港 | 月水金土日のパンスター便 |
| クロスボーダー旅行 | 博多→対馬→釜山 | 2港使い分け | 日韓周遊 |
| マイカー航送 | 博多港 | 厳原・比田勝 | フェリー便利用 |
対馬の主要観光地と最寄り港の対応表
対馬観光の主要スポットは島内に分散しており、観光ルート設計には最寄り港の選択が重要となる。対馬観光物産協会の情報を基に、観光地ごとの最適アクセスを整理する。
| 観光地 | 最寄り港 | 所要時間 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 厳原城下町 | 厳原港 | 徒歩10分 | 対馬藩の城下町 |
| 万関橋 | 厳原港 | 車約30分 | 1900年開通の人工水路 |
| 金田城跡(日本100名城・国特別史跡) | 厳原港 | 車約30〜40分 | 667年築造の古代山城 |
| 和多都美神社(海中鳥居) | 厳原港 | 車約45分 | 豊玉町、海洋信仰の古社 |
| 対馬野生生物保護センター | 比田勝港 | 車約30〜40分 | ツシマヤマネコ展示・無料 |
| 韓国展望所 | 比田勝港 | 車約20分 | 対馬北端から韓国が見える |
| 烏帽子岳展望所 | 比田勝港 | 車約40分 | 対馬全島の眺望 |
| 対馬空港 | 厳原港 | バス約25分 | 美津島町 |
この対応表から見えるのは、対馬南部観光(城下町・金田城・和多都美)なら厳原港、対馬北部観光(韓国展望所・野生生物保護センター)なら比田勝港という大まかな住み分けである。両港を使った「往路比田勝・復路厳原」のような周遊プランで、対馬全体を効率よく巡る旅程も組める。
2026年4-6月の縮小運航と対馬2港への影響
2026年3月6日、九州郵船は2026年4月1日から6月30日までの3か月間、ジェットフォイル運航を1隻体制の臨時配船に変更すると発表した。船員不足を理由とした安全運航最優先の判断である。対馬2港もこの縮小運航の影響を受けている。
影響度の整理
- 博多〜厳原港 ジェットフォイル:便数大幅減
- 博多〜比田勝港 ジェットフォイル:便数大幅減
- 博多〜対馬 フェリー:通常運航(影響なし)
- 釜山〜厳原 パンスター便(火・木):通常運航
- 釜山〜比田勝 パンスター便:通常運航
縮小運航期間中の旅行を計画する場合、フェリー便への切替、または釜山経由の代替ルートを検討するのが現実的な選択肢となる。釜山経由は1時間30分(比田勝)・2時間10分(厳原)の所要時間で、博多経由の2時間15分と大差ない。パスポートが必要だが、対馬旅行と韓国旅行をセットにできる利点がある。
2029年新型川崎ジェットフォイル投入と対馬2港の対応
2025年11月21日に契約が締結された新型「川崎ジェットフォイル」(航海速力43ノット、定員252名、波高3.5m耐航性)は、2029年6月の引渡後、博多〜壱岐〜対馬航路に投入される。日経新聞もこの契約を報じており、業界専門メディアでは九州郵船にとって約35年ぶりの新造ジェットフォイル投入として注目されている。
港湾受入体制
新型船の主要諸元(全長27.4m・型幅8.5m)は、現行ヴィーナス・ヴィーナス2と概ね同等のサイズである。そのため、厳原港・比田勝港・博多港国際ターミナルの既存港湾施設で十分に対応可能と見られる。新型船特有の大規模な港湾改修は予定されていない。
対馬海峡の耐航性向上
新型船の波高3.5m耐航性は、対馬海峡という外洋部分を含む長距離航路にとって重要な意味を持つ。冬季から春先にかけての玄界灘・対馬海峡は風浪が強まる時期があり、現行船での欠航リスクが運航維持のボトルネックの一つとなっている。新型船投入により欠航率が低減されれば、対馬の観光経済と住民生活の双方にプラス効果をもたらす。JRTT(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)との共同発注スキームによる本契約は、こうした離島航路維持の公的支援の象徴的事例である。
対馬の島内交通:港から観光地への移動手段
対馬2港から島内観光地への移動には、いくつかの選択肢がある。各手段の特徴と注意点を整理する。
レンタカー
対馬観光の主流はレンタカー利用である。厳原港・比田勝港・対馬空港の各拠点にレンタカー会社の営業所がある。事前予約推奨で、特にハイシーズン(GW・夏休み・連休)は数か月前からの予約が必要となる。料金は1日5,000〜10,000円前後が標準的。厳原から比田勝までは約2時間(一般道経由)であり、半日かけて沿岸風景を楽しむドライブも人気である。
路線バス(対馬交通)
対馬交通の路線バスが島内主要部を結んでいる。厳原〜比田勝の所要時間は約2時間20分。途中の主要観光地(万関橋・和多都美神社近接など)でも乗降可能だが、便数が1日数本程度のため、観光客の利用には事前の時刻確認が必須。
対馬空港経由
対馬空港は対馬市美津島町に位置し、福岡空港・長崎空港との間で全日空(ANA)が運航している。福岡空港〜対馬空港は約35分のフライトで、海路よりも大幅に短時間で対馬に到着できる。空港から厳原港まではバスで約25分、比田勝港までは車で約1時間30分の距離である。
対馬2港の歴史:海上交通の発展
対馬の海上交通の歴史は古く、古代から日本と朝鮮半島・大陸を結ぶ中継地点として機能してきた。Wikipedia 対馬市の記述によれば、対馬は古代から「金田城」(667年築造)に象徴される対外防衛拠点であり、近世には対馬藩(宗氏)が朝鮮通信使を迎える窓口として機能した。
古代から近世
厳原港は古代から対馬の中心港湾として、大陸との交易・防衛・外交の機能を担ってきた。比田勝港も対馬北部の漁業・交易拠点として古くから栄えた。江戸時代、対馬藩は朝鮮通信使の受入と日朝外交の中継を担い、両港は両国の往来の窓口として機能した。
近代以降の港湾整備
明治期以降は本土〜対馬の定期航路が整備され、戦後は九州郵船が本航路の主要担い手となった。フェリーからジェットフォイルへの高速化により、博多〜厳原は片道半日から2時間台へと大幅に短縮された。1991年のヴィーナス就航は、対馬の観光経済を変容させた画期的な出来事であった。
2024年以降の国際航路再開
新型コロナで停止していた韓国〜対馬の国際航路は、2022年以降段階的に再開された。2024年4月23日のパンスター対馬リンク号の厳原便再開は、対馬の海上交通インフラ刷新期を象徴する出来事である。同時期に進む2029年の新型川崎ジェットフォイル投入計画と合わせて、対馬は近代以降最大の海上交通刷新期を迎えている。
対馬2港のよくある質問
対馬への最速ルートはどこですか?
福岡空港〜対馬空港の全日空便で約35分が最速です。海路では、博多港〜厳原港・比田勝港の九州郵船ジェットフォイル便で約2時間15分です。釜山港〜比田勝港のパンスター対馬リンク号は約1時間30分で、釜山経由の旅行者にとっては比田勝港が最速の入口となります。
厳原港と比田勝港、どちらを選べばいいですか?
目的によって異なります。対馬中心地・厳原城下町・金田城・和多都美神社などの島南部観光なら厳原港、韓国展望所・対馬野生生物保護センターなどの島北部観光なら比田勝港が便利です。両港間は車で約2時間、バスで約2時間20分の距離なので、両方を使った周遊プランも組めます。
パンスター対馬リンクとは何ですか?
韓国・釜山港と対馬(厳原港・比田勝港)を結ぶ国際旅客船です。比田勝便は月・水・金・土・日(土日は2往復)、厳原便は火・木に運航しています。所要時間は釜山〜比田勝が約1時間30分、釜山〜厳原が約2時間10分です。利用にはパスポートが必須となります。
2026年4-6月は便数が少ないのですか?
はい。九州郵船は2026年4月1日から6月30日まで、博多〜壱岐〜対馬のジェットフォイルを1隻体制の臨時配船に変更しています。船員不足が理由です。フェリー便および釜山航路のパンスター便は通常運航されています。
釜山経由で対馬に行くにはパスポートが必要ですか?
はい、必須です。釜山〜対馬の国際便利用時には出国・入国の両側でCIQ(税関・出入国・検疫)手続きが入ります。パスポート有効期間は入国時から3か月以上残っていることが推奨されます。日本国籍の旅行者は韓国へ90日以内の観光であればビザは不要です。
関連記事
- 博多〜対馬 ジェットフォイル&フェリー完全ガイド(2026年版)
- 博多〜壱岐 ジェットフォイル完全ガイド(2026年版)
- 壱岐4港完全ガイド(2026年版)
- 九州郵船の新型ジェットフォイル【2029年就航予定】
- 久米島オーシャンジェット完全ガイド
※本記事に掲載している写真はすべてイメージであり、実際の運航船舶・港湾・観光施設の現状と異なる場合があります。最新情報は各運航会社・施設の公式発表をご確認ください。
※運賃・時刻表は2026年5月時点の公式情報に基づきます。3か月ごとに改定される場合があるため、ご利用前に必ず公式サイトでご確認ください。
※掲載写真はイメージです。
関連記事: 波照間港完全ガイド(2026年版)|日本最南端の有人島への高速船・欠航対策・星空観測
関連記事: 小浜港ガイド(2026年版)|石垣島から25分・ちゅらさんの島への高速船アクセス
関連記事: 座間味港完全ガイド(2026年版)|古座間味ビーチへの玄関口・フェリー到着後の島内移動ガイド
関連記事: Hirara Port Guide
関連記事: Ishigaki Port Guide
関連記事: 運天港ガイド(2026年版)|伊平屋島・伊是名島フェリーの乗り場・アクセス・駐車場情報
関連記事: Motobu Port Guide















コメント